第15回 FIFAワールドカップ アメリカ大会

第15回 FIFAワールドカップ アメリカ大会

第15回大会はアメリカで開催された。対抗とされたモロッコは2ヶ所のスタジアムが収容人数を満たすことができず、加えて当時会長であるジョアン・アベランジェが後押しした。

サッカー未開拓の国であるアメリカで行われた大会のため、アメリカンフットボールのスタジアムをサッカーのため使用するなどして大会を運営。358万7,538人の記録的な観客動員を成し遂げ、大会として大成功を収めた。この後の1996年、MLSの設立と言うことも考えてほぼ全てにおいて成功した大会といえるだろう。

この大会の最大の注目はコロンビアだった。予選においてアルゼンチン相手に5-0の圧勝。カルロス・バルデラマを中心にフレディ・リンコン、ファウスティノ・アスプリージャ、ホセ・アドルフォ・バレンシア、レオナル・アルバレスを擁した陣容で、ペレは大会前の優勝候補としていた。しかし、第1戦のルーマニア戦を落とし、第2戦のアメリカ戦、キャプテン、アンドレス・エスコバルのオウンゴールで敗戦。エスコバルはその2日後に射殺される悲劇に遭ってしまった。

コロンビアと同じグループで困難が予想されたアメリカは第1戦のスイス戦をエリック・ウィナルダのゴールで引き分けに持ち込んで、開催国としてグループリーグを突破。決勝トーナメント1回戦でブラジル相手に敗れはしたが善戦と上々の成績を残した。

大会最年長の出場となったロジェ・ミラはロシア戦において得点を決め、最年長得点記録を樹立。しかし、その試合においてオレグ・サレンコは5得点を決め得点王に輝くことになった。しかし、このグループで決勝トーナメントに進出したのはブラジルとスウェーデンであり、両国はグループリーグで敗退した。

アジアから旋風を巻き起こしたのは初出場のサウジアラビアだった。初戦のオランダ戦では格の違いを見せつけられた格好となったが、第2戦のモロッコ戦で勝利を収めた後、最終節ベルギー戦でサイード・オワイランが50mドリブルから名GKシルヴィオ・プロドオムからゴールを奪ったことは世界の注目を浴びることとなった。

アルゼンチンは、ディエゴ・マラドーナは出るのかどうか危惧されたが、4大会連続の出場を果たし、グループリーグ初戦でギリシャ戦で前線に位置するクラウディオ・カニージャ、ガブリエル・バティストゥータに良いボールを供給、バティストゥータはハットトリック。加えてマラドーナ自身もゴールを決め上々のスタートを決めた。しかし、マラドーナはこの試合におけるゴール後のパフォーマンスから薬物使用疑惑が浮上。彼は第3戦ブルガリア戦から姿を消す。するとブルガリアに破れ、決勝トーナメントにおいてもルーマニアに破れた。

不安がないことが不安と言われ、連覇も期待され、東西統一により合併した旧西ドイツであるドイツは前回からリトバルスキー、アウゲンタウラーが抜けた以外は変わりないメンバーで登場。ユルゲン・クリンスマンの得点などによりグループリーグを難なく突破。決勝トーナメントに入ってもベルギーに勝ったものの、全体的に不調。特に中盤の要、トーマス・ヘスラーの輝きが薄く、チームは準々決勝においてローター・マテウスの得点から先制するも逆転されブルガリアに敗れ姿を消すこととなった。

今大会の台風の目となったブルガリア。予選では最終節に大逆転でフランスを突き落とした勢いのまま、中盤のクラシミール・バラコフ、ヨルダン・レチコフや前線のエミール・コスタディノフ、フリスト・ストイチコフと優秀なタレントを揃え、準決勝イタリア相手に善戦し破れ3位決定戦に回ることとなった。

3位の座を争うこととなったのはブルガリアと欧州予選で同じ組となったスウェーデン。92年の欧州選手権でホストとなったこの国は堅守と攻撃にケネット・アンデション、トマス・ブローリン、マルティン・ダーリン、ヘンリク・ラーションを擁し、グループリーグでブラジルと引き分け、ルーマニアとの試合をPKで制し、準決勝で再び対峙したブラジル相手にまたも善戦するも破れ、3位決定戦に回ってきた。

3位決定戦を前にブルガリアには既に余力はなく、スウェーデンは4-0の圧勝で、3位を獲得することに至った。

決勝戦に進んだのはブラジルとイタリアだった。

ブラジルは準々決勝オランダ戦でデニス・ベルカンプの活躍により2-2に追いつめられたが、ブランコのフリーキックでかろうじて勝利を収め、準決勝スウェーデン戦をロマーリオのゴールで勝利して勝ち進んだ。

対するイタリアはそれ以上の苦労をもって勝ち進んだ。アイルランドとの初戦に敗れ、第2戦ノルウェー戦ではGKジャンルカ・パリュウカが退場。アリゴ・サッキはロベルト・バッジョを代えてルカ・マルケジャーニを投入。加えてキャプテン、フランコ・バレージがケガで交代する状態に境遇。決勝トーナメント1回戦のナイジェリア戦では残り90秒で敗戦となるところからロベルト・バッジョのゴールで同点、延長になってバッジョがまたも決め勝利。続くルーマニア、ブルガリアとの試合も激戦となりながらロベルト・バッジョが劇的なゴールを決め進出する。

決勝戦、ロサンゼルス、パサデナ、ローズボールでの決勝は40度の灼熱のピッチの中で始まった。この試合にイタリアのキャプテン、フランコ・バレージは復帰してきた。試合は21分に当時世界最高の右サイドバックと言われたジョルジーニョがケガにより交替。ブラジルの2トップはバレージを筆頭とするカテナチオを前に崩すことはできず試合は120分を終え、大会初のPK戦による決着となった。イタリアは1人目バレージがPKを外し、互いに3-3で並んだイタリア4人目、ダニエレ・マッサーロが外してブラジル1ポイントリードで迎えた5人目、ロベルト・バッジョ。彼のPKはゴールマウスを遙か上を過ぎていき、イタリアは前回大会に続きPKによる敗退。優勝はブラジルとなって幕を終えた。